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ジャージ事件 〜ゴレンジャージ計画〜

 投稿者:K'z  投稿日:2004年 8月24日(火)22時48分31秒
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  彼が所属するのは陸上部。
普段は学校指定のジャージを着て練習に勤しむのだが、
3年になると「個人ジャージ」なるものが暗黙のもと解禁となる。
彼らも3年になり、例外なく解禁となった。

誰からともなくポツポツと女子部員が個人ジャージを着始めると
当然、男子部員の間でも個人ジャージについて色々な話が出る。
そのうち、NEWデザインのカタログまでが持ち出されて、練習そっちのけでジャージ選考会が連日行われた。
「アシックスのヤツがカッコいいべ?」
「ナイキどぉだ?」
「アディダスもいいんでねぇが?」
と、色々なジャージをカタログの中で見、テンションが上がり始めた。
「なぁ、なぁ、俺ら、ゴレンジャーみたいな色違いのジャージにするべ」
「おぉ〜っ!それいい!」
「じゃぁ、アシックスのこのデザインにするべ!」
「おうおう!」
「色分けはどぉする?」
「赤はキャプテンのJ・H」
「青は副キャプテンのK・T(彼)」
「黄はH・O」
「緑はM・S」
「ピンクはS・O」
「うっわぁ〜!これで揃えたらカッコいいべなぁ」
「早く買いてぇ〜!」
などと、当時の彼らの中ではもの凄い盛り上り方で決まっていった。

この時の3年生陸上部男子部員は全部で6人。

ゴレンジャージ計画は5人。

一人余ってしまっている。
ではその部員はどうしていたのか?
残りの一人H・Yは最初から計画に参加せず、兄からのおさがりを使用していた。

しかし、実はこの中にもう一人、現実には到底「ゴレンジャージ計画」に参加出来ない人物がいた。
それが彼である。
彼は中学校に入学した時、自分の意思で陸上部を選んだ。
しかし、彼の母親は大反対だった。
理由は「走るだけなら、そこらの原っぱでやればいい」と言うことだった。
母親としては吹奏楽部に入れたかったらしい。
「かけっこクラブには協力する気は無い」という事で、まったくと言っていい程
彼は親から無関心・無協力の中で部活を行っていた。
そんな状況下での陸上部生活は何かと事欠くモノで
彼は陸上競技をする上で必要不可欠である「スパイク」も買えない状況だった。

実に致命的である。

しかし、先輩たちが履き古しのボロボロのスパイクが部室の隅にダンボールに山済みで
置いて(捨てて)あったので、その中から使える物を探し、
スパイクのピンも履き古しのスパイクから使えそうなモノを集めていた。
今まではそれで間に合わせ、何とかやってきたが、
さすがに「ゴレンジャージ計画」には通用しない。
なにしろ、そのダンボールの中には最新デザインの青いジャージは無いのだから。

「俺、金無いから無理」

この一言が言えたなら・・・。
しかし、彼にはH・Yのような潔さが無かった。
「俺が(購入を)やめてしまったら、ヨレンジャーになってしまうじゃないか!」
下らない見栄は彼に屈折した義務感を与え
「ジャージを買ってもらうなんて、多分、いや、絶対に無理だ。でも・・・取り合えず母親に話しだけでもしてみよう」と
普段殆ど会話の無い母親との無謀な交渉を選択させた。

そして・・・。

「個人ジャージ買って欲しいんだけど」
「あ?そんな金のかかる部活なんてやめれ」


秒殺である。


しかし、彼のそんな事情を時は解決してはくれない。
日に日に同級生がジャージを揃えていく中、彼は買えない事を言い出せずにいた。

そして、ある日。

とうとう ヨレンジャーが完成したのである。
ここから彼の葛藤の日々が始まった。

     〜続く〜
 

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