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ジャージ事件 〜彼は何故、ジャージを盗んだか〜
投稿者:
K'z
投稿日:2004年 8月16日(月)22時52分56秒
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初夏の爽やかな日差しの下、真剣な眼差しで自転車をこぐ彼。
罪悪感が足を重くしたが、彼はソレを断ち切るかのように立ちこぎして
小路の景色が彼の視界で線になるほど加速した。
スーパーマーケットから随分と離れた川沿いの砂利道で彼は自転車を止めた。
ココは殆ど人通りが無く、土手になっている両脇にちょっとした草むらがあるのだが
まったく手入れされていない為、草が彼の背丈程にまで伸びており、身を隠すには格好の場所であった。
彼は辺りを一度見回し、額に浮かんだ玉の汗をTシャツで拭うと
呼吸を整えながら自転車を押して土手を下り、草むらに入って行った。
彼は草むらの中でジャージを脱ぎ始めた。
上着のチャックをゆっくりと音を消すように下ろし、袖を抜く。
ズボンを脱ごうと腰の辺りに手をかける。何かヒラヒラしているモノが。
「?」
何気なしに上半身をひねり腰の辺りを見た。
寒気がするほどギョッとした。
「誰かに見られてしまったのでは?」
彼は人が行き交う小路を、未清算の値札をヒラつかせたまま逃げてきたのだ。
ただ、実際は一閃の矢の如く走り去る自転車にまたがった彼の腰に舞う
小さな値札に気付く者は皆無であろう。
しかし、彼の腰で犯罪を主張する値札の前では、冷静な解析が出来る余裕を彼は持てなかった。
一刻も早く自宅にジャージを持ち帰り、一度洗濯する事で、罪悪感を洗い流してしまいたい気持ちで一杯だった。
彼はすぐに値札を引きちぎり、川に投げ捨てた。
川の流れに値札と「誰かに見られてしまったのでは?」という焦りを流した彼は、ユラユラと川面で踊る値札をしばらく眺めていた。
値札が川面に弾んだ陽の光に溶けて見えなくなると、彼は少し落ち着いて、草むらの自転車に戻った。
自転車の荷台にゴムバンドで縛りつけてあったビニール袋を取り、脱いだジャージを無造作に押し込んだ。
「袋を開けない限り、ジャージは見えない」
彼は安心し、その袋をカゴに入れ、何事も無かったかのように、草むらから土手の上の砂利道へと自転車を押し
ゆっくりと川沿いの砂利道を青空の下、家に向かった。
途中、衣料品売り場の店員と、買い物をしていた中年女性。
いつもと変わらぬ店先と、川面で消えた値札を思い出し
胸が苦しくなった・・・。
砂利道の振動で、かごの中のジャージが袋越しに彼を責めていた。
彼は彼の弱さを呪い、空へ救いを求めた。
空は何も言わず青く、雲は彼の罪を見つめていた。
彼は何故、ジャージを盗んだか。
それは彼が所属する部活にあった。
〜続く〜
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